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つくばもんスタッフのつぶやき

第1回 運転免許

はじめまして。わたくし、つくばもんのスタッフTでございます。
コラムは不慣れなため、お見苦しいところがあるかと思いますが、以後、お見知りおきを。

給与を受ける身となって歳月が経つと、大学時代が思い起こされます。まだつくば市で暮らす前のことでした。
入学してまもなく、自然とある教室の片隅が友との溜まり場となり、昼休みや講義の合間にお菓子を持ち込み、飽きることなく語り合ったものです。
夏になり学生生活も落ち着くと、友らは交通標識が印刷された本をに持ち込み、「エスジ」「ソツケン」などという、意味不明の単語を口にし始めました。
運転免許の取得に励む友にエールを送りつつも、わたくし視線は伏目がちになるのです。
地球に優しくないガソリンの排出ガス、痛ましい交通事故の死傷者などを生み出す破壊活動に、わたくしは関わりたくありませんでした。
けっして、
「何十万円もつぎ込んだあげく運転免許が取れない惨めさを味わいたくないから」
ではありません。
ですから、次々と自動車学校を卒業し、新しい免許証を見せびらかす友人たちに対して、ジェラシーという言葉は、浮かび上がる余地もございません
おりしも、「エコロジー」がファッションのようにうたわれ始めた時代です。

このたびつくば市に居を移し、自転車で職場に通うこととなりました。桜の季節にペデストリアン・デッキを快走する心地よさだけでも、つくばで暮らす幸せを味合わせてくれます。
季節はめぐり、名高い「筑波おろし」を体感するいい機会が巡ってきました。その情け容赦ない攻撃に備え、厚い手袋を装着しマフラーをコートの中に押し込み、挑みました。
寒風にさらされ自転車を漕ぎ続けると、日々鍛えられていくようです。そのような自らを誇りにすら思いました。
しかし、とある冬の夜、筑波おろしの寒さによって、わたくしのささやかな誇りを打ち負かされました。
その攻撃は、エコロジー・破壊活動などのキーワードも剥ぎ取ったのです。
翌日、わたくしは自動車学校に入校しました。

何とか自動車学校を卒業したわたくしは、自動車通勤をはじめました。
事務所の近くの交差点では、交通事故が発生します。現場に供えられた花を目にするたびに、一度も会うことなく逝ってしまった方への想いで、胸が痛みます。
ですが自動車に乗ってしまうと、そのような供花が目に入ることはありません。花はまちがいなくそこにあるのに。
恐ろしい速度で駆け巡る自動車は、それだけで凶器です。ですが、ひとたび車内に入り込むと、自らが凶器の運び人であることを、忘れてしまいます。

人間という60kgほどのひ弱な物体が、1tの箱に載せられ時速60kmで移動するということ自体、自然の理から外れるのかもしれません。
それは、20世紀から始まった現象ではありません。
文明の曙といえば、古代メソポタミア。人類初の都市国家を作ったとされるシュメール人は、車輪の発明者でもあり、紀元前2500年の壁画に戦車が描かれているそうです。
人類はリスクを犯してもスピードを求めるものなのでしょうか。
ですから、せめて安全運転に努めましょう、ということで。

2003年9月29日