3月ともなると、冬の星座は西空に傾きはじめ、東の空からは春の星座が昇ってきて、冬の星座と春の星座の両方が見られる時期といえます。
西空の冬の星座を見てみると、全天一明るいシリウスの輝くおおいぬ座やすばる(星団)のあるおうし座など人気の星座がひしめいていますが、そうした 中でもっとも有名な星座がオリオン座です。
オリオン座は、真ん中付近に三つ星が輝き、北と南に対称的に1等星のベテルギウスとリゲルがあって、その色も対比されるように赤と白色に輝いて、形 が整っていることが人気の理由でしょうか。
また、オリオン大星雲や馬頭星雲など印象的な星雲があって、図鑑や雑誌などで写真を見たことがある人も多いのではないでしょうか。
さらに、ギリシャ神話でも天の勇者オリオンとして登場し、勇ましい姿もかっこよく、人気を博す理由につながっているのだと思います。
そのほか、小学校理科でも日周運動による星座の位置の変化を観察する対象として、オリオン座が採用されていることが多く、子供達が夜に宿題と称してオリオン座の観察をしているところに良く出くわします。
まだ、オリオン座をみつけられない方がいらっしゃいましたら、ここに掲げる写真と本物の星空との対比で星座さがししてみるといいでしょう。
天文ファンが楽しむ星のイベントのひとつにメシエマラソンというのがあります。
以前のコラム(第68回)でも説明したことがありますが、メシエマラソンでは天 体望遠鏡などを使って、M(メシエ)番号のついた星雲、星団(全部で108個)を一晩の内にいかに多く見るかという競技で、走るマラソンではありません。 しかし、心は夜空を駆け抜けますので、マラソンという名前も私は気に入っています。
銀河や星雲、星団は、天体望遠鏡で見ると淡くボーと光り輝いて見えますが、彗星観測の際に彗星と見間違えないように、シャルル・メシエ(1730年~1817年フランス)が実際に星を観測してつくったカタログをつくりました。そのカタログは後に他の天文学者の補間作業も含めて、今ではM1からM110までの通し番号で呼ばれています。
メシエマラソンはこのM天体(M番号には不明のものもあり、108個を競技の対象としています)を一晩の内にいかに数多く見るかを競う競技です。
M天体は、口径10センチ前後の天体望遠鏡で充分観測できるために、アマチュア天文家の間でメシエマラソンが盛んになってきていますが、今年の観測好機は月齢を考えますと3月13日(土曜日)の夕刻から14日(日曜日)の朝にかけてが最も望ましく、全国各地でメシエマラソンが行われる予定です。
私の所属する神津牧場天文台(群馬県下仁田町)でもこの日、メシエマラソンを行います。ご興味がわきましたら、ぜひお越しいただき、マラソンに参加されますようお誘いいたします。
詳細は次のとおりです。
名称 | メシエマラソン2010in神津牧場天文台 |
開催日 | 2010年3月13日(土曜日)夕方~14日(日曜日)朝 |
会場 | 神津牧場天文台(群馬県下仁田町) |
天候等 | 雨天、曇天は中止となります。 |
参加費 | 無料 |
受付 | 3月13日午後4時~6時 |
観望会 | 3月13日午後6時~14日夜明けまで 各自観測機材を準備し、自由な観望を楽しんでください。機材を持参されなかった方も天文台の76センチ望遠鏡、その他の機材でメシエ天体観望を楽しむことができます。 |
注意事項 | 高原地帯に天文台があるため、夜間は道路が凍結します。交通手段は車しかありませんが、昼間の間に(夕方までに)お越しくださいますようお願いします。 各自、自由にメシエ天体の観望観測をおこなうイベントで、機材の持ち込みは自由です。防寒対策は充分に願います。 夜食や飲み物は各自でご用意ください。 |
休憩など | 天文台の研究棟で休憩できます。仮眠も可能ですが、仮眠用寝具は各自でご用意ください。 |
参加申込 | 事前申し込みは不要です。当日、受付でお申し込みください。 |
問合せ先 | 田中千秋 chiaki407@gmail.com |
主催 | 関東天文協会(神津牧場天文台) |
電話番号 | 天文台の電話0274-84-2655=当日のみ有効 |
日 | 曜日 | 月齢 | 天文現象など |
---|---|---|---|
1 | 月 | 15.0 | 満月 月が天の赤道を通過(南半球へ) |
2 | 火 | 16.0 | |
3 | 水 | 17.0 | |
4 | 木 | 18.0 | 変光星オリオン座Uが極大(4.8等)天王星と金星が最接近 |
5 | 金 | 19.0 | |
6 | 土 | 20.0 | 啓蟄(二十四節気) |
7 | 日 | 21.0 | |
8 | 月 | 22.0 | 下弦の月 木星と水星が最接近 月が最南 |
9 | 火 | 23.0 | |
10 | 水 | 24.0 | |
11 | 木 | 25.0 | |
12 | 金 | 26.0 | 月の距離が最遠 |
13 | 土 | 27.0 | |
14 | 日 | 28.0 | |
15 | 月 | 29.0 | 月が天の赤道を通過(北半球へ) |
16 | 火 | 0.2 | 新月 |
17 | 水 | 1.2 | 月と金星の接近(夕空の美しい光景) |
18 | 木 | 2.2 | |
19 | 金 | 3.2 | |
20 | 土 | 4.2 | |
21 | 日 | 5.2 | 春分の日 春分(二十四節気) |
22 | 月 | 6.2 | 月が最北 |
23 | 火 | 7.2 | 上弦の月 土星が衝 ふたご座5番星の食(えんぺい) |
24 | 水 | 8.2 | |
25 | 木 | 9.2 | |
26 | 金 | 10.2 | |
27 | 土 | 11.2 | |
28 | 日 | 12.2 | 月の距離が最近 |
29 | 月 | 13.2 | 月が天の赤道を通過(南半球へ) |
30 | 火 | 14.2 | 満月 |
31 | 水 | 15.2 |
巻頭でも述べていますように3月になりますと冬の星座は西の空に傾き、東の空から春の星座が昇ってきます。
下の星図で示す夜空は、3月中旬、午後9時前後の星空を表しています。
火星がふたご座とかに座の間付近で輝き、日々、位置を移動しているのが連続観測をするとわかります。
土星もおとめ座にあって、おとめ座の1等星スピカと明るさを競っているように見えます。冬場には見られなかった北斗七星(おおぐま座)も頭上に明るく輝いています。
星図をプリントしてぜひ本物の星空でご確認ください。
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※それぞれの図をクリックすると、大きい星図に変わります。印刷される場合は、A4用紙を横にしてください。
※このコラムで使用している星図は、(株)アストロアーツの天文シミュ レーションソフトステラナビゲータ.8から出力し、加工したものを使用しています。
田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。